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宮古上布を知っていますか?
一言で説明すると、『宮古島で生産されている日本でも最高級品の麻の織物』です。
ここでは宮古上布や宮古織の歴史から、現在の状況まで、詳しくまとめました。
宮古上布とは
宮古島では生まれ育った私ですが、宮古上布の知名度はかなり高いです。
そして、「とても高貴なもので、あまり手に入れられないもの」というイメージがあります。
それもそのはず、『東の越後、西の宮古』と言われるほど日本の中でも最高級品とされる上布なんですね。
1978年に国の重要無形文化財にも認定されました。
(「東の越後」である越後上布とは、新潟県南魚沼市と小千谷市を中心に生産される平織の麻の織物で、仕上げの工程となる「雪ざらし」は、春の風物詩となっています。)
熟練した織り手でも1日で20〜30cm程度が限界で、一反を織るのに3ヵ月以上かかります。
それを聞くだけでも、その質がどれほどのものか、わかりますよね。
また、一反とはどのくらいの長さかというと、幅約40cm、長さ約12m。ちょうど和服一着分が仕上げられる長さです。
歴史は400年前から
宮古上布の歴史は古く、400年以上前にまでさかのぼります。(600年とも言われます。)
当時は琉球王国の時代。
宮古島では織物が盛んで、麻織物をはじめ、絹や綿などさまざまな種類の織物が存在していました。
1580年、島民の女性である稲石(いないし)さんが、旦那を出世させてもらったことに対する「国王へのお礼」として、得意の織物を織って献上したことが世に出たきっかけとされています。
この技術で織られた麻織物は宮古上布と呼ばれ、その後、20数年ほど琉球王府へ献上されました。
そして、1609年、薩摩藩に侵略された後、今度は薩摩への課税品として納めなければならなくなりました。
それが「薩摩上布」という名前で日本全国へ流通するようになります。
品質が役人の昇進に大きく関わるため、要求が厳しく、大変な苦労を強いられたようです。
宮古上布が日本で最高級品とされる質の高さは、この苦労のたまものなんですね。
その後、1903年に厳しい税制度は廃止され、自由生産・自由販売となり、年間生産量は1万反を超えるまでになりました。
この頃が宮古上布の絶頂期と言えるかもしれません。
そして、第二次世界大戦後の1945年、アメリカ合衆国に統治されると、日本への流通は禁じられました。
しかし、その後も生産量がわずかでありながら技術を守り続け、現在に至ります。
作業工程
宮古上布はまず糸作りから始まります。
苧麻(別名:カラムシ、宮古島ではブー)という植物の茎の皮から繊維を採り乾燥させます。
これが糸の原料になります。
次に、このブーを指や爪で髪の毛ほどの細さまでに裂き、そして指で細く長く合わせていき、この作業を「績む」といいます。
・気の遠くなる日数がかかること。
・専門的な技術であること。
・需要が減ったこと。
これらのことから、この糸づくりの人手が足りなく、現在は宮古島のおばあだけが頼りなのだそうです。
そして、出来上がった糸を琉球藍で染め、1本1本丁寧に織り込んでいきます。
最後に、洗濯し木の砧でむらなく打って、光沢を出して仕上げます。
この植物を育て糸を作る工程から、色を染めて反物を織り、砧打ちから検査まで、すべての過程が宮古島で行われているんですね。
織物体験をするには
宮古島では、作業工程を体験する工房がいくつかあります。
織物体験が有名ですが、それ以外にも染めや糸績みもあります。
体験工芸村
体験工芸村では苧麻糸を使ったストラップ作りや、小さなマットを織る織物体験、
ハンカチやストールなどを染めることができる藍染体験を行なっています。
工房がじまる
工房がじまるでは、織物体験から染色体験のほか、貴重な糸績み体験も行なっています。
工房を体験することもできますし、毎週水曜の夜は糸績みのワークショップも開催され、技術の継承に力をいれています。
宮古上布を購入するには
宮古上布の値段は、一反120万円が相場です。東京都の有名デパートや呉服店ではさらに高い値段が付いているとか。
そもそも1年に20反ほどしか生産されないので、数も少ないんですね。
品質の高さに、希少価値も加わり、大変高価なものになっています。
宮古上布を購入するには、以下の3店舗がおすすめです。
宮古島市伝統工芸品センター
染織布とキリムの店「ゆう」
宮古上布「西原織物」
反物には手が届かなくても、はぎれやブラウス、コースターなどの小物も売っていますので、お土産としても最適です。
また、宮古空港にも名刺入れやポーチ、印鑑入れなどといった加工製品も販売されています。
まとめ
以上、宮古上布についてでした。
宮古島で生まれた日本に誇れる最高品質の技術。そしてそれを守り抜いてきた歴史。
現在、原材料不足と後継者不足が深刻な問題なようですが、ぜひ、今後も大切に継承されていって欲しいものです。
参考サイト:「宮古織物事業共同組合」
大事な文化
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